DIC川村記念美術館ロスコルーム

2024年9月某日、千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館へ行きました。

こちらはJRか京成佐倉駅から送迎バスで向かいます。

広大な敷地内にはレストランや売店があり、美術館鑑賞後に園内を巡るのも楽しみの一つ。

絵に描いたような噴水のある池
美術館入り口

こちらの美術館が2025年1月に閉館との情報があり、ショックが隠せません。

お気に入りは美術館所蔵ロスコルーム。画家マーク・ロスコの作品を一部屋に展示しており、部屋の空間ごとロスコの作品を体感できる。心情とのマッチングはその時々で違い、色が心地良い時や息苦しくなる時や、また少し暗めの照明で眠くなる時も。

毎シーズンとは言わないですが足蹴に通った美術館。散歩しながら緑に癒され心が落ち着いていく時間。

慣れているのか近くに来てくれました。

館内にはお茶室もあり、展覧会の作品に寄せた和菓子と抹茶のホッとする一時も楽しみの一つ。

お茶室からの風景

またレストランも敷地内にあり、こちらのデザートもコラボ企画があったりと食事も外せない楽しみです。現在は閉館を聞いて来館混雑もあり、キッチンカーも出ているとの事。

広大な庭や屋根のある休憩所もあるのでお弁当を持参しても良さそう。(海や山に行くのと同じでゴミ等は持ち帰りましょう)。

緑や花で溢れていました

展示は西川勝人「静寂の響き」を開催中。2025年1月26日(日)まで。

館内と窓からの風景や採光を活かした展示のレイアウト、作品の魅せ方、素晴らしかったです。

世の中では芸術は不可欠ではないといわれたり、ビジネスを考える上では無駄のように扱われたりもします。しかし感性を育て心を豊かにしクリエイティブ思考になる、そんな場として大切であり他にはない空間と考えています。

この美術館の行く末を見守りたいと思います。

※9月末日、閉館が3月まで延長との記事を拝見しました。

DIC川村記念美術館

MODE SURREAL 奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリズム

東京都庭園美術館で行われている奇想のモード展に行ってきました。

現在は時間予約しての来館ですが、人数制限している分、一つ一つの作品をゆっくり観る事が出来ました。

庭園美術館は明治時代にアールデコ様式で建築された旧朝香宮邸です。

展示作品とその空間も一緒に楽しめますし、各部屋xテーマごと(Chapter1〜8)とイメージにあった展示をしているのも伺えます。

展覧会は撮影禁止ですが、Chapter9の「ハイブリッドとモード」では撮ることが出来ます。

写真は舘鼻則孝さんの「太郎へのオマージュ」アーティスト岡本太郎さんのオブジェをイメージさせられます。

立体作品に見えますが、代表作のヒールレスシューズのシリーズ。靴です。

下は串野真也さんの作品。

飛べそうな靴ですね。

脳裏に焼き付いているのは、玉虫の羽を無数に使用したヤン・ファーブルの甲胄(カラー)。気味悪くも見えるし、昆虫の自然の美しさも見えるし、襟の形となった全体感は装う事もできるし、アートとも言えるし、言葉で表すには難しい感覚でした。

別空間に1作品のみ展示。入口で簡易メガネを貰い、メガネを通して鑑賞します。光る蚕の糸で出来たドレスはANOTHER FARMの作品。

新館Chapter9に続くChapter8は、「和の奇想」ー帯留と花魁の装い

のタイトルで着物は参考、椎茸や小豆など食モチーフや百足や蝙蝠など帯留めでは珍しいものが展示してありました。大正時代のものが多く興味深かったです。

全体を通して身に付ける身に纏うものでは有りますが、どの作品も2022年現在の日常からは遠く、でも未だ身近なアイテムであり、とても考えさせられました。

ファッション、アート、建築、デザイン、装飾の歴史、文化、ジェンダー等、様々なジャンルの方が見て良かったと思える展覧会だと思います。

4月10日まで。

公式HP

マルジェラが語る映画

とても久しぶりに仕事の後、映画館へ向かいました。

ここ暫くは20時を過ぎて、どこかに滞留することは出来ないという認識でしたので、本当に映画が観れるのかしらと心配でした。

エレベーターとエスカレーターを乗り継いで、予約からチケットを発券、数人が会場前に待っていたので安心しました。

マルタン・マルジェラのブランドイメージはどんな感じでしょうか?

ブランドタグが4つのステッチ?

白くて美術館のような店舗?

ファッションショーは大抵、顔を覆ったモデル登場?

足袋型のブーツ?

どれもマルジェラのクリエイションのひとつですが、どこか抽象的。

それはマルジェラ自身が表立って出ていないからかもしれません。取材NG、撮影不可、どこまでもデザイナー本人は出てきません。

映画にはマルジェラの手がたくさん登場します。そして落ち着いていて心地良い声。終始、隣にいて話を聞いたり質問をしたり身近に感じますが、姿は出て来ません。

BOXを取り出してはその中身に纏わるストーリーが展開していきます。

またメゾンのプレスやクリエイター、ライターやブランドを取り囲む人々が登場し、ストーリーを盛り立てます。

マルジェラがアイディアや発想を語り洋服という形にすると、周囲が世の中向きに翻訳するような感じです。

もちろんファッションショーもあります。

初めてショーから、パリコレクションでのプレタ、オートクチュールと過密なスケジュールは他のメゾンと変わりありません。

しかし追いつめられるような気迫やストレスは感じず、プレッシャーも映画からは読み取れない、淡々とクリエイションを発表していく様子が伺えます。

これは他のメゾンとは違っていて、ある意味、健全な状況なのかなとも思えます。描かれてはいませんが、コレクションブランドは一人では出来ませんから、無論、サポートする側が優秀であることには違い無いと思います。

映画パンフレットより

何故これほどにマルジェラのクリエイションが指示されるのか。映画を観る前、映画中、映画後と考え続けました。

それは形あるものだけれど抽象的であり、その抽象的なものが人の生活に入り具現化。時間と共にその人に馴染む。

一見当たり前で普通であることを思考が何周もして辿り着いたら特別な普通だったと気付かされる。

その思考と追求のプロセス、探究心に魅了されているのかもしれないと思った映画でした。ご興味ある方は↓

公式HP

映画館サイト

ファッションインジャパン1945-2020ー流行と社会

マスクで蒸れる二度目の夏ですね。

国立新美術館で開催中のファッションインジャパンに行って来ました。

美術館も入り口、出口の一箇所化。手の消毒に体温確認も有りました。

お天気は青空に恵まれました。

ついつい入場前から見入ってしまうガラスの茶室。夏は涼やかに見えます。冷たい飲み物もいただきたい所ですが、作品なので眺めるのみ。

展示は年代ごとにまとめられていました。懐かしいと思ったり、改めてデザイナーさんの事を知ったり、頭の中では時代が前後交差しながら、答えのない答えを探しているようでした。

生地の美しさだったりディテールの面白さだったり、シルエットを見つめたり、途中はショー映像ありTVのCMがあったり、制服や舞台の衣装もあり見応えはたっぷり。月曜日の夜にやっていた「ファッション通信」のビデオが流れていて、あの大きなサングラスに張りのあるお声の大内 順子さんの解説を観て、自分はここから多くを学んだなと思ったり。(本当に毎週楽しみにしていた番組でした)

密にならないよう入場制限をしていて、撮影可能な箇所は案内がありました。

かなり最新の作品も。ファッション学生が数名で学びに来ている様子も伺えました。授業だけでなくファッション一色の空間から得られるものは大きいと思います。

テントが洋服になるデザイン。

2000年代初めにフセイン・チャラヤンのファッションショーでソファカバーからワンピースに変身したのが衝撃的だったなと思い出しました。

今の10〜20代の方がどのように感じるのかも興味があり、会場では耳も澄ましながら歩いてました。

日本は着物から始まり独自の進化を続けて来たという流れを見ることができ、改めてファッションの歴史を認識しました。

お洋服好きさんにも歴史を見たい方も、日本ブランド復習にもなります。

写真は全て第8章「未来へ」から。撮影不可のところが多かったので、あえてこちらの作品のデザイナーさんは記載しないでおきます。

会場を出たところにあった生地が土に還る展示。循環していくことが当たり前の今日。さらなる進化も楽しみです。

8月23日まで国立新美術館にて。

映画Dris Van Notten

この美しい世界観の着想源は?

ドリス・ヴァン・ノッテンのショーを見る度、溜息と共に首をかしげておりました。

上映中に見逃してしまったドリス・ヴァン・ノッテンのドキュメンタリー「ファブリックと花を愛する男」。恵比寿のガーデンプレイスの中庭、真夏の夜、ピクニックシネマにて...やっと観ました!

場所柄かファッション・ピープルも居て、目で追いたくなるお洒落な方が。

こちらのガーデンピクニックは7月26日~8月25日週末にかけて Kino Iglu(キノ・イグルー)プロデュースで開催。無料で観れるとあって人気で座れず柵の縁に腰掛けましたが、心地よい風が吹いていて終始、快適でした。(あとから判りましたが送風機のお陰でした)。

各々の食べ物飲み物を持ち寄り、リラックスムードの中、映画がスタート。

ドリス・ヴァン・ノッテンはベルギーアントワープシックスの一人。

取材嫌い、職人気質、表に出るのを嫌うデザイナー。

そんなドリスはやはり独特のムードを持ち、生地を並べては次のコレクションに向けて選別。モデルをトルソー替わりにコラージュするように布当てていき、生地遊び。プライベートもパートナーの彼がぴったりと側に付きます。

愛犬も登場しますが、きっとこんなハードワーカーには付き合いきれないでしょう...寝ているシーンがフッと笑わされました。

映画ではメンズのコレクションがフォーカス。フォトシューティングよりもやはり完成に至るまでの生地選びや分量計算、シルエット等、プロセスが印象的。あるコレクションではテーマを決めてプリント生地を作ったり、ファブリックに至るまでの工程も出てきます。

自宅を使ったりスタジオだったり広いスペースに山ほどの布地を並べて、じっくりと見ていきます。

一つのコレクションが終われば、また次のコレクションとファッション業界にいると、「休み」という単語を忘れます。映画でもメンズレディース共に発表しているシーズンがあり、やはり多忙極まりない状態がありましたが、それでもプライベートのドリスに焦点を当てています。(気難しいデザイナーを等身大で自然に撮る、難しい撮影だったそうです。)

言語は英語ですが、終始落ち着いた空気感を纏っていて、きっとその雄大さはあの広大で美しい庭から培っているのだと思いました。またドリスの作る洋服から放つ独特の色は、彼にとっては身近な自然美であることが解りました。

布地は植物のモチーフ柄だったりとても魅力的。映画中、素敵な生地!と思っているとまたその上に生地を重ねたり、ここにはこの生地を差し込もうと試行錯誤しているシーンが有りましたが、私的には1枚でも素敵な布を何とも贅沢使い...とよだれ状態でありました。

映画の最後はデザイナー念願のオペラ座で行った2016-17年秋冬のメンズが登場しますが、より世界観の解りやすい同年秋冬と2017年春夏レディースのショーを貼っておきます。